朗読ボランティア 「杜の音通信」 (H30年1月号)

  
長野淳子 [posted:2018.01.30]


平成26年の9月から、月1回のペースで朗読ボランティアに伺っている 「ギャラリー杜の音」
1月は、以下の4作品を朗読しました。


① 川端 誠 : 落語絵本 「はつてんじん」
② 松谷 みよ子 : 著 「安珍と清姫の物語 道成寺」
③ 宮沢 賢治 : 作 「雪渡り」
④ 辻 邦生 : 作 「花のレクイエム」 より 「山茶花」


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① 川端 誠 : 落語絵本 「はつてんじん」   (朗読:蓬田 則子さん)


学問の神様、菅原道真公をまつる天満宮の縁日は、毎月25日。
新年になってから、天満宮にはじめてお参りに行くことを 「初天神」 といいます。


はつてんじん1.jpg


おねだり上手の金坊を、渋々初天神に連れて行くことになったお父さん。縁日と言えば露店。
案の定、金坊は 「わたがし!たこやき!あんずあめ!」 と、おいしそうなものを見つけてはお父さんにねだります。
その度に 「あれは、どくだ!」 と言って、ごまかすお父さん。


買うの買わないのと、繰り広げられる父子の攻防。
もちろん最初は、お父さんの方が絶対優位ですが、あれよあれよという間に立場は逆転して・・・・・


はつてんじん2.jpg


作者の川端さんは、実際の2月25日の 「初天神」 に出向いて、
天神梅まつりののぼりや、くず餅、えんどう豆など、見に行かなければ描けないものを取材したそうです。


DSC_2110.JPG 蓬田さんと三浦さん.jpg


今回は、三浦さんに手伝っていただき、絵本も見て頂きながら
お父さんと子どもの楽しい掛け合いを、蓬田さんが江戸っ子になりきって、テンポよく読んでくれました。
最後のオチに、杜の音の皆さんも声をあげて笑ってくださいました。


★ 蓬田さんの感想
今回は、はじめて 「落語話」 に挑戦しました。
父・母・息子の声を演じ分けるのが、思いのほか難しく、まだまだだなあと反省しきりです。
それでも、杜の音の皆さんが、楽しそうに笑って下さったので、少しホッとしています。
これからも、楽しみながら続けていきたいと思います!!


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② 松谷 みよ子 : 著 「安珍と清姫の物語 道成寺」  (朗読:田中 憲子さん)


むかし、紀伊の国に清姫という美しい娘がいた。
清姫は、年若い山伏・安珍をひと目見て心を奪われた。


けれど、清姫の想いは安珍に届かない。
思いあまった清姫は、蛇になり寺の鐘に隠れた安珍を鐘ごと焼き殺す・・・。


道成寺.jpg


安珍が焼死、清姫が入水自殺した後、道成寺の僧の一人が、不思議な夢を見た。


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夢の中に二匹の蛇が現れ、そのうちの一匹が言うことには、


「私は釣り鐘に隠れた僧です。あの世で清姫と夫婦となり、今は蛇道に落ち苦しい日々を送っています。
どうか私たちのために法華経を供養してもらえないでしょうか」


目を覚ましてからも、夢と現実の区別がつかないほどはっきりと覚えていたことから、
僧は寺の者をあつめて法華経を読み、安珍と清姫を手厚く弔った。


201001292132214bb.jpg


その後、僧の夢に美しい衣を着た二人の人が現れた。
「法華経の功徳により、私たちは蛇道を離れ、天上界に生まれることができました。感謝いたします」
言い終わると二人の天人は、天へと飛び去って行ったということである。


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「安珍清姫物語」「娘道成寺」 として、能や歌舞伎などで広く知られている作品。
今も残されている 「蛇の塚」「鐘楼の跡」・・・・・なんとも切ない思いがします。


今回は、田中さんが 「清姫の一途さ」 「安珍の戸惑い」 を、うまく表現してくれました。
杜の音の皆さんも、じっくり聞き入って下さいました。


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③ 宮沢 賢治 : 作 「雪渡り」   (朗読:三浦 由子さん)


雪渡り1.jpg


「堅雪かんこ、しみ雪しんこ」
雪がすっかり凍った夜、四郎とかん子が小さな雪沓をはいて、歌いながら歩いていくと、
森の中から子狐の紺三郎が出てきて、歌に入ってきます。


二人は、紺三郎と友達になり、狐小学校の幻燈会に招待されました。
月のきれいな晩、森の木の枝に白い敷布がかけられ、いよいよ幻燈会が始まります・・・。


狐は人をだまさない。
四朗とかん子が紺三郎を信じてきびだんごを食べたことで、とても素晴らしい幻燈会になりました。


雪渡り2.jpg


「キックキックトントン キックキックトントン」 という音が、心に響きます。
歌のようなフレーズでもあり、何かを唱えているような言葉にもきこえます。


聞いたことがない音なのに、どこかで聞いたことがあるような気もしてくる。
その雰囲気や情景、様々な表情を、賢治は音で表現しているのかもしれません。
そうしていくうちに、私たちは不思議な世界にひきこまれていきます。


子どもが自身の不思議な世界に浸って遊んでいる時、そこには 「真実」 と 「虚構」 という境目はありません。
きっとどちらも 「真実」 なのでしょう。
大人になって忘れてしまった、そんな世界を体験させてくれるのが 「賢治の世界」 だとしみじみ感じます。


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今回は岩手出身の三浦さんが、大好きな宮沢賢治の作品を、読んでくれました。
キツネの子と四郎とかん子の掛け合いが、とても愛らしく、杜の音の皆さんも、にっこりと微笑みながら聞き入っていました。


★ 三浦さんの感想

「雪渡り」は、宮沢賢治が人間の子どもたちと狐の子どもたちとの交流を描いた微笑ましい作品です。
この季節にふさわしい情景と不思議な幻燈会に行った気分を、杜の音の皆さんにもぜひ味わって頂きたいと読ませて頂きました。
賢治の童話はなぜか、黙読だけより、朗読したり朗読を聴いたりした方がその良さがわかるような気がするのです。


今回のレッスンでは、長野先生が作品について 「それはこういう意味では...」 と何カ所か解釈してくださいましたが、
いずれも自分では気付けなかったことばかり。
そう解釈してみると 「雪渡り」 という作品が、私の中で、さらに臨場感がある楽しい作品になりました。


また 「もっとゆっくり読んで!情景を伝えて!」 と指摘されました。
確かに録音して聞いてみると、ゆっくり読んだつもりでも、不思議なくらいちっとも情景が描けないのです。
作品によって、必要な間は全く違うのですね。間の大切さをしみじみ感じました。


本番直前のリハーサルでは、先生から 「『これは楽しい物語!』 と冒頭の風景描写で伝えて!」 とのご指摘。
はっ、確かに風景を伝えるだけで精一杯になっていました。
この微笑ましい物語を成功させるには、冒頭の読みにかかっている、と思い切った読みにしました。


後から先生に 「良かった」 とおっしゃっていただき、ホッといたしました。
岩手出身で、いつかは宮沢賢治を読んでみたいと思っていた私は、読ませていただき大満足でした。


杜の音の皆さん、賢治の世界にお付き合いいただきありがとうございました。
長野先生、ご指導ありがとうございました。
なお、歌の部分は長岡輝子さんの朗読CDを参考にさせていただきました。ありがとうございました。


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④ 辻 邦生 : 作 「花のレクイエム」 より 「山茶花」 (朗読:宮崎 幾野さん)


憧れの年上の人が鋏で切ってくれた 「山茶花」(一月) 難民の少女が希望のしるしとした 「ライラック」(四月)
放浪癖のある兄が好きだった 「向日葵」(八月) 明治維新のとき自害した女の前で咲き乱れていた 「萩」(十月)・・・・・


十二ヶ月の季節の花に導かれて生み出された、辻邦生さんの短い物語十二編。
そして、そのひとつひとつに添えられた山本容子さんの銅版画が美しく、「文学」 と 「絵」 が深く共鳴しあう作品です。


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純粋な愛、初恋、無垢な気持ち・・・小説集というより散文詩のようです。
辻さんの文章を読んでいると、この方は本当に優しい方なんだろうな、と感じられます。
どの話も少し悲しげで、読んでるとき周りが無音になるような、その静けさと物悲しさに惹かれます。


後書きによると、毎月テーマの花だけを決めて、それぞれが話し合いをしないで完成させたとか。
それなのに 「文章」 と 「絵」 が違和感なくぴったりと合っていて、なんとも不思議です。


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今回は、宮崎さんが、今の季節に合わせて 「山茶花」 を情感豊かに朗読してくれました。
表紙には 「山茶花」 の写真が、きれいに装丁されていました。
杜の音の皆さんも、自身の 「淡い初恋」 を思い出しているかのような眼差しで、うっとりと聞き入って下さいました。


★ 宮崎さんの感想

今回聞いて頂いた作品は、冬の花、山茶花にちなんだ 「少年の淡い初恋」 の話です。
男性の方には、少しでも自分に重なる部分を思い出していただけたらと願いつつ、読みました。
女性の皆様には、山茶花の花を思い浮かべていただければと思いました。


散会の時に 「もっとお話がしたいわ!」 と言ってくださる方がいて、
何か思い出すこと、感じるところがあったかと嬉しく思っております。
これからも、様々な作品に挑戦していきたいと思います!!


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毎回、作品選びに始まって、登場人物の配役やBGMなど、「読む人」 も 「聞く人」 もお互いに楽しめるように、工夫していますが
読んでいる間の 皆さんからの 「笑い声」 や、読み終わった後の 「拍手」 「楽しかった」 の声が 「朗読して良かった~」 と思う瞬間です。
そうした声を励みにして、これからも 「朗読ボランティア」 を続けていきたいと思っています。


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