朗読劇 「とりつくしま」 ~彼女の思いを言葉に乗せて~ (Kiyoko)
10月28日 ㈰ せんだいメディアテーク7階 スタジオシアター にて
ステージ・アップ主催 朗読劇 「とりつくしま」 を上演しました。
空は深くすみわたり、野山も秋景色となる頃でした。
当日は、お忙しい中多くのお客様にお越しいただきました。
また皆様から、温かいメッセージやきれいなお花など、たくさんの応援もいただきました。
この日を迎えることができましたことに、心から感謝申し上げます。
今回の上演作品は、東 直子 作 「とりつくしま」 命を亡くした人の 「魂の物語」 です。
私の役は、結婚2年目の20代の女性です。
「あたしは、死んでしまったの? もう、生き返れないの?」
交通事故で突然この世を去ることになってしまった彼女は、現実を受け入れられず戸惑います。
そんな思いを感じとり、手をさしのべるものと、彼女は出会います。 それが 〈とりつくしま係〉 です。
〈とりつくしま係〉 は言います。
『この世に未練がある、死んだことに納得がいかない、どうしても会いたい人がいる、
見ておきたいものがある、そんな方々のために、とりつくしま係は日夜業務をはたしているのです』
そう言われて、彼女が一番に思ったのが、大好きな夫......渉のことでした。
「渉は今、何をしているだろう? 渉に会いたい......」
そうして彼女は、渉の 『身の回りの モノ』 になることを決めます。
それは、渉のお気に入りの 『トリケラトプスのマグカップ』 でした。
『あたしが触れることができるのは、彼の唇と指だけだったけれど、
それを全身で受け止められることが、なにより至福だった』
そうして1年が過ぎた頃、事件はおきます。なんと渉に新しい女性が現れるのです。
楽しそうに語り合う二人。
『嫌だ、こんなの見たくなかった! とりつくしまなんて、もらうんじゃなかった!』
ある日、女は 「ジノリのカップ」 を持ってきて渉に言います。
「食器は、そのうち全部取り換えたいの。急にってわけじゃないの」
「少しずつでいいの。ゆっくりでいいから、いずれ全部」
「ジノリのカップ」 を見て、渉は気がつくのです。
「ごめん・・・オレは、これ、なんだ」
そう言って、渉が手にしたのは、愛用の 「トリケラトプスのマグカップ」 でした。
『あたしは、渉が好きなトリケラトプスだよ。ツノが3本ある。ここがいいんだよね』
『さわって・・・ 渉・・・』
朗読するうえで大切なこと、
それは、登場人物の心情を深く掘り下げることにより、全体的なニュアンスをつかむこと。
彼女の心、渉の心、とりつくしまとはどんな存在か?
渉の前に現れた新しい女性の企みなど、文章の中に描かれていることをひもときながら、読み込んでゆく......
先生からのヒントに、ならばこの読みでよいのか、違うはず、べつの読み方だという気づき、
私の台本には、重要なヒントやポイントが、稽古のたびに書き込まれていきます。
彼女と渉の思いを言葉にのせて......心のままに ...皆さまにお届けすることの大切さを、
長野先生から教えていただきました。
会場にお越しくださいましたお客様......ほんとうにありがとうございました。
また、ステキな照明と舞台監督、素晴らしい音響、
そして、おもてなしの心でお客様をお迎え下さいました、ステージ・アップの先輩方、
更に、歩みを共にして頂いた出演者のみなさん、
私達を支えて下さいました多くの皆様に、心から感謝申し上げます。 (小笠原清子)