切ない&面白い 「くちびる」 を目指して (三浦由子)
ステージ・アップの朗読会 は、今回で 三回目 の出演でした。
今回の 「くちびる」 は、憧れの先輩が使う 「リップクリーム」 になって、好きな先輩を見守る「女子高校生」
「心残りは、むちゃくちゃある。だって、あたし、まだ16歳だったんだよ!」
「心残りをたった一つにしぼれと言われたら、まだ、恋をしたことがないこと、かな」
「だって、好きになった人はいたんだから」
「あたしは、考えに考えて、綾香先輩のリップクリームを、とりつくしまにすることにした」
長野先生から 『くちびる』 を・・・とお話をいただいた時、私が一昨年に出演させていただいた
「口紅のとき」 の 『18歳』 という作品に似ている気がして、「また、制服ですか~?」 と、思わず苦笑してしまいました。
しかし、作品を読み返してみると、「とりつくしま」 の中では珍しく、あまり深刻ではない可愛いお話で、
初恋のドキドキ感が楽しく、なんだか読めそうな気がします。
もしかすると今回の8作品の中でも 「ほっと一息つける作品」 という役割を持っているのでは・・・?
と、出演をお引き受けすることにしました。でも一番の要因は 「舞台の楽しさが忘れられなかった」 ということかもしれません。
作品を読み解くレッスンはとても楽しいものでした。
「高校生の恋愛だからもっとライトに、『辛い』 ではなく 『切なく』 読んで!」 と先生から言われたときは、目からウロコが落ちました。
ある日、先生のお手本の読みを聴いて、「この話は実は感動物だったのだ!」 と気づいたときは、ビックリしました。
私の中で作品が変わった瞬間です。
苦労したのが、「朗読」 ではなく 「朗読劇」 だったことです。
この年で 「だって私、まだ16歳だったんだよ」 というのですから、違和感ありありです。
遠目で女子高生らしく見えればいいなあと思っていたのですが、ビデオ録画をみる度に自分の表情や動きにショックを受けて・・・
でも、長野先生が 「大丈夫だから!」 とずっと励ましてくださったので、「なりきるしかない!」 と、鏡を見て練習を続けました。
もう一つ苦労したのが、本番1か月前から、のどの調子がわるくなったことです。
声が嗄れたり風邪をひいたり、毎回レッスンで 「今日も嗄れてます...」 という私に、先生もさぞ歯がゆかったと思います。
のどが潰れるのが怖くて、抑え気味にしか読めませんでした。
でも、「三浦さん、本番ははじけてくれると信じているから!」 とおっしゃって下さって、
私も 「絶対、間に合わせる!」 と、密かに声に良いというものを色々試したりしました。
そして、本番。これで最後だから、思い切り声を出そうと思っていました。
心地よい緊張の中、なんとか声が出ました。時々、嗄れた声が出ましたが、それほどひどくありません。
切ない&面白い話を目指して、笑ってもらえたら成功と思っていましたが、お客様はちゃんと要所要所で笑ってくださいました!
暗闇の中でも、お客様が楽しんで下さっていることがなんとなく感じられ、読むのが楽しくて楽しくて、自然といつもと違う読みになります。
最後のレッスンで直しをいただいた部分の読みで、さらに作品が盛り上がった気がしました。
考えていたよりずっと満足して、本番を終えることが出来ました。
「ほんの、数秒のことだったと思う。とても軽いキス、なんだと思う」
「くちびるが離れた瞬間、あたしの意識は、飛んだ」
終演後、「高校生に見えた」 とコスプレばかりに目に行ってしまったかと思いましたが、
「笑えた」 「若いころを思い出した」 とおっしゃって下さる方がいたり、ずっと握手をしてくださった方がいらしたり、とても嬉しかったです。
私がご案内した方からは 「どれも良かった」 「いい体験・経験ができた」 「感動した」 と嬉しい感想をたくさんいただきました。
みんな 「体験」 という言葉を使うので、不思議に思って訊いてみると
「ちゃんと表現している朗読は、上映している作品を見ている感覚」 なのだそうです。
「情景が目の前に浮かび大満足、聴く側に多くを想像させる表現法にひかれた」 という方もいらっしゃいました。
「マッサージ」 の美穂役も、声が嗄れていた部分がありましたが、お客様が笑って下さったりしたので、楽しく読めました。
二回目の 「お父さんのバーカ」 のセリフは今ひとつだったかも...。
でも、たった一言でも様々な気持ちが込められて、人間の声ってすごいですね。朗読って面白いですね。
「とりつくしま」 は様々な作品が集まって、その作品世界を作り上げている、と先生がおっしゃいました。
本当に相乗効果がある聴きごたえがある公演に仕上がったと思います。
長野先生、素晴らしい演出とご指導、誠にありがとうございました。
お手本の読みは、私が読むよりずっと面白い!といつも感嘆しておりました。
会場においでいただいたお客様、励ましあった出演者の皆様、スタッフの皆様、
多くの方のおかげで、無事に終えることが出来ました。ありがとうございました。
これからも、作品と向き合いながら、朗読を続けて行きたいと思っております。
いつの日かまた、お会いできることを楽しみにしております。 (三浦由子)