「余命わずかな父へ贈る結婚式」

昨年から引き続きこの1~2年は,震災で結婚式を延期していた方も含め、
東北のブライダル業界は忙しい1年だったことでしょう。


私も類にもれず追われるように日々を過ごしておりましが、
気が付けば、ブログを1年以上アップしていなかったのですね。


結婚式は、毎回それぞれのドラマが繰り広げられますが、
震災後のこの1~2年は、殊更心に響く結婚式が沢山ありました。


その中でも、私自身の記憶に強くインプットされた感動の結婚式をご紹介します。
今日は、その第一弾です。


2012 ブライダルファイル① 「余命わずかな父へ贈る結婚式」 


2012年 3月。
人前結婚式の依頼が舞い込みました。
しかも6日後。


依頼主は、震災で延期になっていた結婚式を夏にあげる予定でした。
そんな中、新郎のお父様が病に倒れ、間もなく体の自由が利かなくなるとのこと。
そこで急遽、挙式のみ行うことを決意したそうです。


本来であれば夏を待って、お父様も披露宴で楽しい時間を過ごすはずでした。
そこで 「挙式と披露宴のハイライトをミックスした結婚式」 をご提案すると
新郎新婦も前向きなお返事。


アレンジ可能な 「人前結婚式」 だからこそできるプランニング。
式の中に、ケーキ入刀・両親への花束・記念品贈呈、
そして、新郎新婦それぞれに御両親への手紙の朗読をいれることにしました。


挙式当日。
若さと幸せ溢れるお二人。本当に幸せそうでした。
列席者は、御両親と兄弟、そして数人の親族のみ。
今回の事情を知っている僅かな人数でのささやかな結婚式。
事情を知らないのはお父様だけ。


お父様不在で和気あいあいとリハーサルを済ませ、和んでいた時、
病院のスタッフと新郎の妹さんに支えられながら、お父様が車椅子で会場入り。
その瞬間、新郎新婦も家族も皆、涙。
沢山の結婚式で沢山の涙を見てきましたが、これまでとは明らかに違う涙。


新郎新婦も家族も、スタッフもカメラマンも衣装さんも、そして私も、
そこにいた全ての人が胸にこみ上げるものを感じながらも、
お父様に悟られないよう必死に感情を抑えている・・・不思議な時間と感覚でした。


そして、いよいよ挙式スタート。
皆、涙が止まらない状態。


お父様一人だけが表情を変えず、そこにいる。
一人で歩くことも、声を発することも、笑うことさえ難しい状況。
でも、息子から目を離さないお父様の喜びが伝わってきました。


「書いたことのない手紙を読んでみたい」 と、自ら手紙の朗読を希望した新郎。
こみ上げる感情をおさえることができず、涙が溢れ、止まらない・・・
でも、なんとか最後まで自分の想いを伝えました。


終始、無表情で見守っていたお父様が、ラストのフラワーシャワーで、初めて笑顔。
笑うことさえ難しい状況で贈ってくれた笑顔。
最高の祝福ではないでしょうか。


お父様だけがご自身の病状を知らないと伺っていましたが、
お父様は、全てを悟っている・・・そう確信しました。


「いい結婚式だね」 と、会場スタッフ。
「久しぶり心に響く結婚式だったね」 と、カメラマン。
気が付いたら、スタッフも皆、涙を流していました。
日頃、素敵な結婚式を沢山見ているスタッフにとっても、特別な結婚式だったのでしょう。
とうとう、私もこらえていた涙を流してしまいました。


ドラマのような結婚式。
まさか、自分がそんな結婚式に巡り合うとは・・・
忘れません。二人のこと。そしてお父様のこと。


「お父さんとお母さんのような夫婦になりたい」 手紙の中でそう言っていた新郎。
きっと御両親のように素敵なご夫婦になることでしょう。


そして今、お父様のご病状が良好に向かっていますようお祈り致します。


リングピロー.jpg


二人のリングピローはダッフィー&シェリーメイ❤
指輪を腕にはめて登場! 可愛かったです!