『口紅のとき』 に 司会として参加して
12月3日、仙台メディアテークにて、ステージ・アップの朗読劇 『口紅のとき』 が開催され、
私は一昨年と昨年に続き、司会をさせていただきました。
4日前のリハーサルで、全体の流れと出演者全員の仕上げを拝見し、
会場が閉まる直前まで綿密に打合せをさせていただきました。
このリハーサルに同席させていただく事が本番を成功に導く一つの要素となる、と自分自身に念を押し、
舞台を取り仕切る舞台監督の指示と、細やかなところにこそこだわりを持ち続ける
長野先生の信念にお応え出来るように...との思いで臨みました。
当日は12月というのに、まるで小春日和のような暖かいお天気に恵まれ、
仙台へ向かってハンドルを握る私の心も躍ります。
スタッフも出演者も、開演前の準備に余念がありません。
それぞれのセクションでの責任を果たす為、懸命に取り組まれ、舞台への意気込みが伝わります。
開場前からロビーには長蛇の列ができ、「本日は満席」 という嬉しい情報を胸に、
すべてのお客様に気持ちよくお座り頂く為、陰アナと客席の誘導を担う私の中で暫し緊張が走ります。
有り難い事に、お客様のあたたかいご協力を頂戴し、一つもお席を空ける事無く、全員お座り頂けました。
いよいよ朗読劇 『口紅のとき』 開演です。
ひとりの女性の6歳、12歳、18歳、29歳、38歳、47歳、65歳、79歳の、口紅にまつわる小さなドラマ。
幼少期から高齢期へと様々な年齢のシーンにおける口紅とのエピソードは、
6歳の頃、母親が口紅を塗る瞬間を垣間見た、その時から始まる口紅への回想とともに、
実は、人生の中のかけがえのない大切なひとときが、私達に何度も訪れていたことを気づかせるのです。
今回、朗読劇として繰り広げられた この 『口紅のとき』 は、
8人の読み手から発せられたひとつひとつの言葉が、
小関佳宏さんのギターの穏やかな旋律が漂う中、
まるで生命を宿したように、聴き手の皆様に生き生きと届けられました。
読み手の個性を醸し出し、その年齢に聴き手を誘いながらも、
全体がひとつの物語として成就してゆく様を目の当たりにし、
舞台袖で耳を澄ましていた私も、その場に居合わせる事が出来た喜びを噛み締めておりました。
ひとりひとりの声が、お客様の心に優しく染み込み、きっとお客様も、
それぞれの年齢にご自身を重ね、じっくりとお聴きいただいたことでしょう。
拍手が沸きあがり、出演者とお客様の心が結ばれたようなフィナーレを、
舞台袖から眩しく眺める光景は、今も鮮明に思い出されます。
開演前、ご協力いただいたお客様の優しさに心から感謝申し上げます。
そのご親切に甘んじる事無く、いろいろなシチュエーションに対応出来る様に務めて参りたいです。
すべてを終えて帰路に着く途中、車の中で小関佳宏さんのアルバム 「STORY HOUSE」 を聴きながら、
「そうだ、今日のことを 私の 『口紅のとき』 の 一つのエピソードにさせていただこう」 と、ふと思い、
何だかとても清々しい、心地よい感動に包まれている自分を感じたのでした。
今年も素敵な舞台に関わらせていただき、感謝の気持ちで一杯です。本当にありがとうございました。 (及川 満奈美)