「病院の先生の言葉」 (その1)
昨年の秋口、私は本当にご難続きでした。
9月の初めに、出張先で転んで左足の甲を骨折。
一月後やっとギブスが取れて、何とか日常生活を取り戻したと思った11月の中頃。
今度は、自宅の浴室で足を滑らせ、右足のひざ裏の靭帯を1本切ってしまったのです。
あまりに足元の怪我が続くので、神社仏閣にお参りに行こうかと思ったほどでした。
周りの人の中にも、それを熱心に進める人もいたほどでした。
滑って足を着いた瞬間 『プツン』 となにかゴムが切れるような音が聞こえました。
「あ~やってしまった」 と思いました。
しかし、その日は午前中からイベントの司会の仕事が入っていて
当日の朝ですから、ピンチヒッターを立てることもできません。
私は覚悟を決めて、足にテーピングをして現場に向かいました。
そして、主催の方に事情を説明して、ステージ上での司会ではなく
陰マイクでのアナウンスに、変更をお願いしました。
有り難いことに主催の方のお許しもいただけて、
イベントは全て陰マイクで、なんとか終了しました。
しかしイベントが終わる夕方には、もう一歩も歩くことができなくなっていました。
この時も、主催の方や、イベントのスタッフの方に、たくさん助けて頂きました。
車いすを押してくださる方、病院へ行く車の手配をして下さる方、
車が来るまで寒いからと、自分の着ていたコートを脱いで掛けて下さる方、などなど
本当にたくさんの方に、助けて頂きました。
そして、痛みをこらえながらやっと着いた、病院での出来事です。
先生が私の膝に手を当てながら 「ちょっと動かしてみましょうね」 と言いました。
私は 「先生、やめて下さい!!」 と必死で抵抗しました。
実は、イベントの最中に、ちょっとでも足を動かそうとすると、
膝がこむら返りのようになって、あぶら汗がでるほど痛かったのです。
すると先生は、にっこりわらって
「わかった。じゃあ動かさないからね」 と言うと、お話をはじめました。
「今の状態は靭帯が切れたことで、体がびっくりして、動かすことを脳が拒否してるのね。
だから、動かそうと考えただけで、こむら返りがおこったんだと思います。
それだけ、今回のけがは大変な状態だということです。
痛かったですね。大変でしたね。
でも、もう大丈夫ですよ。安心して私に任せて下さい」
そう言うと、私の膝を静かに優しく撫でながら、
「大丈夫。大丈夫。もう大丈夫だよ」
と言って、最後に両手を合わせて、お祈りをしてくれたのです。
私も思わず一緒に手を合わせて、お祈りをしてしまいました。
『手当て』 とはよく言ったものだと思います。
なんと不思議なことに、この後、こむら返りがおこらなくなったのです。
先生の 『手当て』 に、先生の 『言葉』 に、私の脳が、私の膝が反応したのだと思います。
「そんなことくらいで」 と言われそうですが、私は信じています。
言葉に思いが宿ったとき、それが思いもかけない力を持つことを・・・
あらためてその思いを強くした出来事でした。
お陰様で、右足もだいぶ良くなってきました。
病院へは、2か月に1回の通院になっています。
先生は、待合室から診察室まで歩いてくる私の 「足音」 を聞いて
「杖がいらなくなったんだね!」
「まだちょっと右足をかばって歩いてるね!」
「ヒールの少し高い靴がはけるようになったんだね!」 と言います。
そして帰り際には
「あまり無理をしないように!」
「転ばないように気を付けて!!おだいじに!!」
そう言って、笑顔で送ってくれます。
私は、毎回温かい気持ちになって病院を後にします。
やっぱり 『言葉』 って大事だと思います!!
今日も気持ちのいい青空がひろがっています