「謝る」 ということ

先日こんなことがあった。


あるイベントで、私が主催する朗読劇のチラシをまいてもらうことになった。
織り込み作業に間に合うように会場にチラシを届けた翌日、一本の電話があった。


電話の主は、そのイベントの代表者だと名乗った上で、こう言った。


「昨日チラシをあずけて行かれたようですが、誰かに了解を得たんですか?」


どうやら 「了解を得ないで、勝手に置いて行かれては困る」 ということらしいのだが、
この言い方が実に威圧的で、さすがの私もビビッてしまい、心臓がドキドキするほどだった。


私は、そのイベントの出演者に、きちんと了解をとっていたのだが、
どうやら先方で連絡の行き違いがあったようだ。


私が 「出演者の〇〇さんに、了解を得ていますが・・・」 と言った瞬間
「えっ?」 と言った電話の主は、慌てて 「ちょっと待っててください」 と言うと、電話口を手で覆った。


電話の向こうで、何か言い合っている様子の後、
電話の主は受話器を塞いでいた手を離して、私にこう言った。


「あの、わかりましたから、もういいです」


さすがの私も、これにはちょっとムッとした。
自分たちの連絡ミスで、勝手に文句を言っておいて、
事の次第が判明したら 「わかりましたから、もういいです」 とは・・・


「それでは宜しいんですね。チラシはまいて頂けるんですね」 と念を押す私に、
その人は 「はい」 とだけ言って、そそくさと電話を切った。


結局その人は、最後まで謝らなかった。
「こちらのミスでした」 も 「すみませんでした」 も、とにかくひと言も謝らなかった。


はじめに、かなりの勢いで言いきってしまったために、
それが間違いだとわかっても、振り上げたこぶしを下ろせなくなってしまったのだろうか?


「謝る」 ということは、勇気のいることかもしれない。


しかし、たとえそれが、直接自分に責任がないことだとしても、
相手をいわれなき誤解で、不快な思いにさせたのは事実なのだし、
ましてや、そのイベントの代表であるならば、謝ってしかるべきではなかったろうか?


今、ちまたでは、「ある新聞社の記事」 が、話題になっている。
「訂正」 はしたが、肝心の 「謝罪」 が遅すぎる・・・と


その新聞社も、そのイベントの代表も、何とも残念なことである・・・と、私は思う。

ねこ.jpg