「片づけたい女たち」

久しぶりに、芝居を観ました。
永井 愛 作・演出、グループる・ばる 公演 『片づけたい女たち』


片づけたい女たち.jpg


幕が開くと、舞台の上は足の踏み場もない程の ゴミの山。
よくもまあこんなに散らかせたものだと、びっくりするところからスタートします。
あまりの散らかりように本当に唖然茫然で、しばらくは開いた口が塞がらないのです。

登場人物は、都会に住む中年女性3人。
彼女たちは学生時代からの友人で、突然連絡がつかなくなったツンコ(岡本 麗)を心配して
おチョビ(松金よね子)とバツミ(田岡美也子)がマンションを訪ねると、
なんとその部屋は 「ゴミの山」 に・・・

「こうなったのにはそれなりの理由があるのよ」 というツンコに
「一緒に片づけてあげる」 というおチョビとバツミ。

3人で部屋を片付けながら、ひとつのゴミをきっかけに、何気ない会話をきっかけに、
仕事や家族や友人などの 「人間関係」 や、長い間先送りにしてきた それぞれの 「人生の問題」 に、
そして、今まで見ないふりをしてきた お互いの 「心の闇」に、否応なく向き合わざるを得なくなっていく。

「部屋」を 「住む人の心の状態」 として捉え、散らかった部屋を片付けながら、3人の女性たちが、
自分がこれまでの人生で何をしてきたか、何をしてこなかったのかを整理していくのですが、

実際に芝居の中でセリフを言いながら、燃えるゴミ ・ プラスチック ・ ビン ・ カン ・ トレー ・
牛乳パック ・ 衣類 ・ 雑誌 ・ 新聞 ・ チラシ類と、ちゃんと分類しながら片づけていき、
芝居が終わる頃には 「部屋」 も、そして3人の 「心の中」 も、きれいに片付いているのです。


この作品は、2004年に初演の幕を開け、今回で3度目の再演なのですが、
私は以前一度観て、とても面白い作品だったので、再演を心待ちにしていました。

永井 愛さんの作品には、『歌わせたい男たち』 や 『ら抜きの殺意』 など
傑作がたくさんありますが、中でもこの 『片づけたい女たち』 は秀逸です。

何といっても、ツンコ(岡本 麗)とおチョビ(松金よね子)とバツミ(田岡美也子)の
切れのいい掛け合いが小気味よくて、いい味を出しています。


るぱる.jpg


世の中では 「ゴミ屋敷」 が社会問題になったり 「断捨離」 がブームになって久しいですが、 
「不要なものを手放せば、心も体もスッキリして気持ちがいい」 ということは解っていても
「必要な物」 と 「不要な物」 の区別は、人それぞれの価値観で違い、
それこそ簡単には片付かず、何とも悩ましいかぎりです。

そう言えば、芝居の中で、捨てるか捨てないか迷った時に
捨てる覚悟が出来るまでの取り敢えずの 「保留箱」 が、結構便利に使われていましたっけ。
「人生の上の保留箱」 も、時として必要なのかもしれない・・・・・
そんなことを思った芝居でもありました。